実に面白いのである。登り坂があり、下り坂があり、狭い入り組んだ迷路の感がする道がそこには存在し、見る者を引きつけさせる。そして、そこには巨大な招き猫の顔や手作り感たっぷりの数々のオブジェが出迎えてくれる、言わばドラマ仕立ての散歩道が存在するのである。
最初の出会いからそうだ。以前この地を訪れた時は伊那製陶、INAX、そしてLIXILと母体の名前が変わったライブミュウジアムを尋ね、そのアーティスティックなもの作りに感動した。そして再び訪れたのは、そのお膝元であったその町のその陶に関わっていたであろう街並を見てやろうと思い描き伺った。
今更この土地の説明をしても烏滸がましいので敢てお話しは控えたが、そう、ここは知多半島の巨大な国際空港セントレア(中部空港)のお膝元の常滑市である。日本における屈指の焼き物の街であると聞く。そして街の陶磁器会館なるものから散歩がてら色々な街並が見え、体験できる簡単なお散歩コースがあると聞き、そこを起点とし歩み始めた。
片手にコース案内のパンフレットと、道すがらのサインを頼りに、まず最初に見たのは大きな道路の壁面に施された数々の招き猫のオブジェであり、そこから少し会館の方へ戻り、いよいよ狭く入組んだ散歩道に入るのである。そこには数々の焼き物がオブジェとして表現されており、また幾つかの直販の窯元が有り、それらがここを訪れる者に飽きを来させない仕掛けに成っているのである。
少し進んだ時、狭い入り組んだ迷路の先のその土管で仕切られた壁伝いに進むと、その登り坂の上には少しの空間と古いお寺が存在した。しかしそこが終点ではなく、そこからまた迷路のような下り坂が始まる。そこには少しの緑とそしてレンガ造りの登窯に挟まれた面白い癒しの空間が演出されている。
生き生きしている窯や煙突も有れば朽果てかかっている窯や煙突も有り、それらの中で土管等を焼いていたであろう巨大な窯が焼き物の展示即売会場に成っているのも珍しくない。少し覗いてみたりするも中々の良い値段で自分にはとても手を出せる代物ではなかった。ただアートに飛んだものや格調高い焼き物等が展示されており、見る者を飽きさせない興味をそそられるものが沢山置かれている。
終盤に少し立寄った店でお手頃だと思った急須と土管を買ったのだが、後でそこの店主にその理由を聞くと、方や伊万里焼で方やmaid in Great Britainだそうである。目利きがないので本当かどうかは分からないが少し得した気分に成ってその店を後にした。
常滑焼きの代表は、昔の伊那製陶が制作していた土管と水回りの陶器ばかりと思っていたが、招き猫の陶器類も有名なそうで、先頃リンクウタウンに出来た大型ショッピングモールには、その巨大な招き猫が鎮座していた。常滑焼きは裏方の無骨な焼き物で荒々しく男性的な焼き物と思っていたが、今回の散歩道に足を踏み入れるとそこはアートの花が咲いたような人々の心を和ませる陶器の焼き物がそこかしこの窯元にその作品群が展示されているのである。
今回は気軽にAコースと言う道のりを辿ってみたのだが、その散歩道に点在する窯元等の家並みや、窓を飾る数々の焼き物のオブジェ、登り窯の天空を見上げる10本のレンガ造りの煙突、道すがらの一角を占める巨大なオブジェ(多分、鶏かな・・・。)等等も、行く先々で驚きがあり、人々の心を擽るのである。この散歩道には煙突や窯のレンガ造りの有る風景と、その窯元らが運営している個々のお店、そして常滑の持っている環境と風景、どこからみても、そこを訪れるものに対して決して飽きの来させない環境が整っているように思えるのである。
最後に、これは如何ならぬものなのかと自分に問いかけ、「常滑やきもの散歩道」というパンフに良い文面を見つけたので引用する。「独特の世界観を作り出している散歩道。いつもより、少しだけゆっくり歩いてみませんか。」と・・・。この空間を一度覗き見るのも良いだろう。心温まる夢散歩を・・・。
Photographer 岡田 朗
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