【a_talk-episode 23】
・・・音を奏でるおとぎの国へ・・・ | ||||||||||||||||||
10月のまだ残暑が残る頃、何処からとなく柔らかな音色が聞えてきた。ここは夢の中なのか…。いやここは山々が聳え立ち、森林など自然が謳歌している所なのである。そう、ここは岐阜県中津川市苗木の中津川市鉱物博物館の一室である。昨年、中津川市の工房を訪ねさせていただいた栗谷本先生が、この博物館で、『森の恵み展』を開かれるのをお聞きし伺ってみた。
今回、ここで展示されるのは、昆虫の標本箱に見立てた昆虫標本箱、鼻笛、山や森など自然の中で集めた木の実や小枝(枯れ枝も)の素材、はたまた、木工店等で頂いた端材の素材を生かした制作物。そう、ここで開催されているのは「昆虫標本箱」や「鼻笛」等の自然な素材を使用したクラフト展である。
そもそも栗谷本先生とこれらクラフト等制作の出会いは、約10年前に遡ると聞く。素材として、まだまだ使える正目の綺麗な端材等木工店が処分するのをみて、何となく悲しくなり、そこから何か生まれないだろうかと試行錯誤を繰り返し、鼻笛等音の出るものの制作を思いつき始めるようになったと聞く。今では木工店から譲り受ける端材はヒノキやケヤキ、カキ、エンジュ等10種類以上になったと聞く。先生の制作物は、木工の端材だけではなく、使われなくなったカレンダーの入っていた筒やペットボトルの空等を利用した、もの作りも盛んに行われるようになったと聞く。
また、ここからが先生の素晴らしい実践なのだが、これら制作物を使って地域の子供達とコミュニケーションをはかり、メカの時代に木の温もりや、自分で作ったものに対しての愛着心(ものとの関わり方)が忘れがちであるので、木の端材等で自分だけのオリジナルなもの(笛等)を作る行程(ハサミやナイフを使う等)を楽しめるようにしむけ、子供達の感性を呼び覚ますお手伝いをしていると感じると言われ、また端材で音が出る喜びと驚きも、与えているとも言われる。それからオブジェ等、ものの制作において色々な体験(汗をかく体験)を子供達にしてもらい、合せてeco的な環境教育にも一役買っていると思うとも言われている。ここには素晴らしい実践教育があるのである。子供達の喜怒哀楽や感性が見えるようである。
ところで、栗谷本先生のこれら制作物についてのアイディアは、何処から出てくるのか尋ねると、発明されたものに付加価値を付けるところから始まるとお聞きした。そのアイディアは朝起きた時などに、ふっと思いつく事が多々あると聞く。ただ、それを具体化する第一号制作物は、殆ど形には成らず、それの第二号制作物から形に成っていくともお聞きした。
例えば笛とペットボトル。普通では結びつかないものだが、これが合体すると、それはそれは綺麗な音が出る。アイディアから驚嘆が生まれるのである。またこのアイディアが生まれる一つの要素として、素材のストックが考えられると思われる。アイディアが浮かんだ時にすぐに取り掛かれるように、木工の端材や、自然の山や森でとれた木の実や、自然素材の材料を工房に多くストックし、またストックされた素材が多種に渡ってそこにあるのだから、必然的に物作りに対しての意欲(アイディア等)が涌いてくるそうである。(ここに多くストックされているものは、自然に返すことの出来るものが、ほぼ全てであると聞く。)
今の自信作はとお聞きすると、木の実等で作った昆虫の標本箱と音の出るものとしては今回の展示会でお見せしているトロンボーンが人気を博していると聞く。今回鼻笛の音の幻惑に導かれてここまで尋ねてきた。汗をかきながら日々自然と対峙し、その良さを享受されて活躍されている栗谷本先生、この地球の生き物である人間について、その自然との対話の中で、色々と学ぶべきものが多々あると言うことを教えていただいた。また人と人とのコミュニケーションの重要性も教えていただいた気持ちだ。 ここで敢て言わさせていただこう、『御伽の国の貴公子、栗谷本先生』と…。 Photographer 岡田 朗 |
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