始まりは興味本位での行動かも知れないが、その旅を続けるに当たって何らかの形が見えてくるものである。
そう、今回のバスツアー成るものの旅も始めは興味から生まれたものであり、6月号でお話をした白川郷についても、大昔に行ったことが有るので、昨今、持て囃されているが、どの様に変貌したのか興味を引かれ、そして動いたのである。ただ白川郷に関しては6月号で述べたように、その環境たるや「何事ぞ」とおもんばかりの光景が広がっており、ショックを受けたのは確かな事実で有ったように思われる。
ただ、そこから立直るのも旅という一つのアイテムの治癒力かも知れない。今回のバスツアーなるものは多くの県を跨ぐロングランである。名古屋市(愛知県)に始まり岐阜県に移り、次に富山県に入りそして糸魚川のある新潟県にも入りそして宿泊施設のある長野県小谷村(白馬地区)に到着し1日目を終え、そして2日目は白馬から長野県を縦断し、駒ヶ根から飯田を通り岐阜の中津川に辿り、そして最後に名古屋市(愛知県)にたどり着くルートである。この延々と繋がるルートを一人のバス運転手が所々で休憩を取り黙々と運転しているのである。お疲れさんと、頭が下がる思いである。
と今回の旅なるものを簡単に述べてみたが、実際は至る所で色々な光景に出会うのである。寄道はしなかったのだが富山県と新潟県の県境に位置する断崖絶壁の親不知。バスの中から垣間見たのではあるが中々身の毛が弥立つ様な景色ではある。そして日本のフォッサマグナの存在で知られている糸魚川、立ち止ってみた訳ではないが何とも純朴な田舎の臭いが漂っている光景がそこにはある。そしてこの糸魚川から葛折りの急な坂道を一路、長野県小谷村へ突き進むのである。この小谷村は標高が高く冬にはスキー場等の数々のゲレンデが点在する。日本屈指のスキー場が有るのもこの地区である。そして1日目の終点である宿泊施設に到着した。
元々この宿泊施設が企画したツアーであり、そこに名古屋の企業が参画し執り行われているものである。余談ではあるが白馬コルチナというゲレンデを運営管理しているホテルである。そしてその母体も芸術に深く関わっている専門学校等を運営している企業であり、それがそのホテルの建物に反映されているのか、ヨーロッパのアルプスを連想させるようなイメージの形状になっているのである。
余談ではあるが、この宿泊した日に熊本大震災が発生した。テレビを見ながら体の震えが止らなかったのを記憶している。少し前にあるテレビ番組でその熊本城の美しさやその地域のことを学んだのでより多くの衝撃を受けた。
気を取り直し、そして翌朝にこの周りを探訪してみた。真冬の雪の中の喧噪な景色とは違い、そこには一つの寂しさを醸し出している。ただ、冬よりも本来の姿は今と思うのだが…。この姿で一つ思った事がある。これは白川郷の時にも言わせてもらったのだが、ホテルは寛ぐ場である。そこに自己主張の強い大陸文化を持込まれてはその寛ぎも興ざめてしまうのである。食事の時間は特にそれを感じるのである。この思いはどうやら自分だけではなく同じツアー客の中でも意見の一致が見られるようである。施設運営者の一考を期待する。
話は元に戻すが、その後ホテルを後にし一路イチゴ狩りが出来る伊那の見晴らしファームへ向った。前回も味わったのだが、紅ほっぺ、章姫等の味は甘くて瑞々しさも加わりとても満足のいく狩りであった。そして少しの時間をこの南アルプスが一望できる見晴らしファームで過ごし、次に向ったのは養命酒の工場である。
自分の思い込みなのだが養命酒は養老山地近くの場所で造られるものと勘違いをしていた。元々この駒ヶ根に根付いているようで養命酒のふるさとと唱われているようである。自然の中に建っている白い建物の工場はその自然とマッチし微妙な美を醸し出している。ここで工場見学をし、色々と養命酒についての知識を幾分か入れたところで試飲をさせて頂いた。やはりここを後にする時、両手にその商品がぶら下がっている姿は想像できるのだが…。ここを離れ旅の終点に近づくのである。
最後に一言。そこに存在するものは色々な表情をそこに訪れるものに提供している。その醸し出された情景をどの様に受け取るのかは個々の感性なのだが…。環境はとても大事なアイテムの一つであると考えるが・・・。 Photographer 岡田 朗
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